百日咳とは?
百日咳とは
百日咳は、百日咳菌による感染症で特有の痙攣性の咳が特徴の急性呼吸器感染症です。
一年を通じて発生がみられます。
乳児の場合、無呼吸発作など重篤になることがあり、生後6か月未満では死に至る危険の高い病気です。
成人では、比較的軽い症状で経過することが多く、受診・診断が遅れ感染源になることがあります。乳児の周りでは特に注意が必要です。
ワクチンの普及とともに感染者数は減少してはいますが、世界各国でいまだ多くの流行が発生しています。
どうやって感染するの?百日咳の症状は?
主に、患者の咳やくしゃみなどのしぶきに含まれる細菌によって感染します(飛沫感染)。
百日咳はカタル期と痙咳期と回復期という3つの主な段階があります。
7~10日程度の潜伏期間を経て、風邪症状がみられ、徐々に咳が強くなっていきます(カタル期:約2週間)。
その後、短い咳が連続的に起こり、咳の最後に大きく息を吸い込み、痰を出しておさまるという症状を繰り返します(痙咳期:約2~3週間)。
激しい咳は徐々におさまりますが、時折、発作性の咳がみられます(回復期:2~3週間)。
大正製薬サイトより引用
検査と診断について
① 喀痰培養
ただし検出率は低く、咳発症後2週間以内(カタル期)が最も分離率が高く、症状の強い痙咳期に培養で診断つけることは難しいです。
② 遺伝子検査(PCR検査・LAMP法)
PCR検査は、百日咳菌の遺伝子を増幅し、感染を判断する検査です。咳発症後1~3週以内では非常に高い精度を示します。
一般にPCRの感度は発症後3週間程度までは高く、その後は検体中の菌のDNA量低下により低下します。
最短15分くらいで結果をだすことができますが、直接百日咳菌のPCR検査ができる施設は限られていて現状当院ではできません。
また、LAMP法という方法もあり、外注検査で対応しているところもあります。
③ 抗体価測定
PT-IgG抗体
・ワクチン接種の影響を受けるため、ペア血清の判定が望ましい。
・PT-IgG抗体は、2週間後から徐々に上昇し、ピークは4週間後以降。
・FHA-IgG抗体は、特異性が乏しいため、参考程度となる。
百日咳抗体IgAと百日咳抗体IgM
・ワクチン接種の影響を受けないため、単一検査での診断が可能。
・IgMの方が、IgAと比較し、感度が高いと言われている。
広島市臨床検査センターより引用
百日咳の治療法や予防は?
百日咳の治療法には、百日咳菌に対する治療と咳に対する治療があります。
百日咳菌にはマクロライド系抗生物質が用いられます。
百日咳は、百日咳菌から出される毒素が原因となりますので、毒素の活動がおさまるまで待つ必要があります。
抗生剤は除菌することは可能ですが、毒素に対しては効果がありません。
大正製薬サイトより引用
咳には鎮咳薬や気管支拡張薬などを用いますが、睡眠障害や摂食障害がある時は、入院加療が必要な時があります。
有効な予防法は予防接種で、予防接種法に基づく定期予防接種が行われています。
2か月に達したら、早めに5種混合ワクチンを接種しましょう。
また、定期予防接種により百日咳の免疫を得ていても、
小学校就学前にワクチン効果が薄まるため、日本小児科学会では任意での3種混合ワクチンの2回追加接種を推奨しています。(自費になります。)
①小学校就学前の1年間(MRワクチン・おたふくワクチンと同時に、
②11-12歳(DTワクチンをDPTワクチンに変更)
予防接種による免疫効果の持続は5~10年程度と短いですが、ワクチン接種により、百日咳にかかるリスクを80~85%程度減らすことが出来ると報告されています。
妊婦さんにとっても百日咳の予防接種は重要?
新生児や乳児における百日咳の点で非常に重要です!!
新生児や乳児において重症化しやすいことが知られています。
重症化すると、肺炎、脳症などを引き起こし、命の危険性があります。月齢が若くなるほど、咳などの症状が出ずにいきなり呼吸困難を来すこと、入院治療となる確率が高いこと、特に生後2ヵ月以内では死亡率が高くなること、などの特徴があります。児へのワクチン投与は月齢が浅い児には実施することができないため、大きな問題です。
百日咳ワクチンの母体への投与による有効性と安全性
百日咳菌に対するワクチンは、三種混合ワクチンであるTdapおよびDTaP(DPT)が知られており、わが国ではDPTワクチン(トリビック)が投与可能です。
DPTワクチンは、ジフテリア菌・百日咳菌・破傷風菌の三種類の感染症に対する混合ワクチンで、古くから乳児から成人まで広く接種され、有効性と安全性が示されています。三種混合ワクチンを妊婦さんに投与することによって、妊婦さんの体内で産生された抗体が胎児へ移行し、生まれたばかりの赤ちゃんや生後数カ月の乳児の百日咳を予防できることも判明しております。
三種混合ワクチンは不活化ワクチン(百日咳)と無毒化トキソイド(ジフテリアと破傷風)の合剤であるため、児への安全性は高く、また妊婦さん自身にも有益であることから、接種が奨められます。
妊娠27週〜36週で接種が推奨されます。
ワクチン接種推奨のまとめ
・特に接種するお勧めの方
5-12歳頃の小児*
妊娠している方とその家族
新生児・乳児の家族
*特に5-6歳(年長)の際にMRワクチン、おたふくワクチンと一緒に接種、11-12歳での2種混合の代わりに3種混合として接種がお勧めです。
百日咳流行状況
この文章を記載している現在東京では百日咳が流行しています。
東京都感染症情報センターHPより引用
年齢別のものが下記になります。
先ほど予防接種を推奨している年代の発生数が多いことがわかります。
東京都感染症情報センターHPより引用
百日咳は予防がとても大事です!
なので、ぜひワクチン接種を検討ください。ワクチン接種希望の方は当院に事前にご連絡ください。
少しでも参考になれば幸いです。