尿管結石
1:尿管結石とは?
2:尿管結石の原因と症状
3:尿管結石の診断と検査
4:尿管結石の治療と再発予防
尿管結石とは
結石の多くは腎臓の中の腎杯、腎盂、そして膀胱で形成されるが、結石が存在する位置により、腎結石・尿管結石・膀胱結石などと呼ばれています。尿路結石は、この腎結石・尿管結石・膀胱結石を総称して呼ばれています。尿管結石は尿管に結石ができるものです。尿管結石では、激しい痛みを生じ非常に苦しい思いをされる場合が多いです。尿路結石は男性の7人に1人、女性の15人に1人の割合で一生のうちに患うと言われています。治療は小さい結石であれば自然排石が期待できますが、大きな結石(8mm以上)では自然排石の確率が低くなるので、積極的な治療介入が必要になります。排石しても2年後には2割程度の、5年後には4割程度の人で再発するともいわれており、再発しやすい疾患です。また、結石になりやすい人は特に男性では肥満の割合が高く、高血圧、糖尿病、高指血症の頻度が高いことがわかっていますので注意が必要です。年々尿路結石症は増加しております。この理由としては①食生活や生活様式の欧米化、②診断技術の向上、③人口の高齢化などがあげられます。
尿管結石の原因と症状
尿路結石はシュウ酸カルシウム結石、リン酸カルシウム結石、シスチン結石、尿酸結石などが成分によってわかれます。カルシウム結石が大半を占め、尿酸結石がその次に多いですが全体の1割程度です。結石ができやすい人は、 タンパク質、特に動物性蛋白質の摂取が多く、炭水化物の摂取が多い人、カルシウム摂取量は予想以上に少ない人、シュウ酸摂取量が多い人、マグネシウム摂取量が少ない人、水分摂取量が少ない人などです。一つ一つを簡単にお話すると、動物性タンパク質摂取量の増加は、結石の生成を阻害する尿中クエン酸の排泄量を減少させ、結石を起こしやすくさせます。カルシウムはシュウ酸と結合しやすい性質をもっていて、シュウ酸が体内に多いと高シュウ酸尿になり結石の再発が多いことがわかっています。なので、カルシウムをとり腸管内でシュウ酸と結合させ便中から排泄させることが重要です。また、シュウ酸の多いものはほうれん草、たけのこ、大根、紅茶、緑茶、チョコレートなどなので、摂取量を減らすことは重要です。マグネシウムは結石の生成を阻害する働きがあり野菜や海藻などの摂取不足は、結石形成を促進します。
腎臓内にある結石の多くは無症状で経過するため、数cmの大きさまで成長することがあります。結石が尿管に詰まってしまうと、わき腹や下腹部に突然激しい痛みが生じます。夜間や早朝に起こることが多く、痛みは2~3時間続き、その間は数分おきに痛みが強くなるというように、痛みの強弱に波があるのが特徴です。尿の流れが悪くなることで、腎臓からの尿の出口である腎盂や腎杯が腫れて水腎症(腎臓で作られた尿の流れがせき止められて、尿の通り道や腎臓の中に尿がたまって拡張した状態)を発症することがあり、腎機能を低下させる場合もあります。これに感染症を併発するケースもあります。また、結石による刺激に伴って血尿や頻尿の症状が現れるケースもあります。
尿管結石の診断と検査
いちばん大切なのは病歴になります。どちらかの突然の激しいわき腹や下腹部の疼痛は尿路結石を疑うきっかけになります。
検査としては、まず尿検査で血尿や尿路感染症の有無を確認します。
CTや超音波検査、エックス線検査など腹部の画像検査で結石の部位や大きさ、腎臓の形や機能を調べます。多くの結石は腹部単純X線検査(KUB)で診断できますが、通常のエックス線等に写りにくい結石も、CTでは容易に確認できるため、CT検査を行う場合が多いです。CT検査を行うことで結石の大きさ等や場所などもわかるので非常に有用です。
腹部超音波検査は最も体に負担のない検査法です。X線検査で診断できない小さな腎結石や尿酸結石などのレントゲンに写らない結石の診断に有用です。また尿の流れが滞るために生じる水腎症の有無もわかります。
尿管結石の治療と再発予防
治療に関しては保存的治療(薬物療法も含む)と積極的治療に大きく分かれます。
一般的には10mm未満の結石は、水分を多量に摂取して尿量を増やし自然排石を目指します。
5mm以下の結石が自然排石する確率は68%、5mmより大きいと47%といわれています。また下記のような積極的治療手段を要する確率は、2mm以下の結石で4.8%、2-4mmの結石で17%、4-6mmの結石で50%という報告があります。
積極的治療
・体外衝撃波結石破砕法(ESWL)
体外より衝撃波を結石に当てて砂状に砕く方法です。短い期間で治療できますが、排石までには時間がかかる場合もあります。身体への負担が少なく、安全性が高い治療法です。
・経尿道的尿管結石採石術(TUL)
体外衝撃波砕石術では砕石できないサイズや位置にある結石を尿道から細い内視鏡を入れてレーザーや空気衝撃波などで砕石する術式です。数日~1週間程度の入院で高い治療効果が期待できます。
・経皮的腎・尿管結石採石術(PNL)
上記の治療では除去するのが困難な2cm以上の結石や、比較的大きな腎結石に対して行われる術式で、背中に小さな穴を開け、そこから内視鏡を入れて結石を除去します。
・開腹手術
お腹を切って結石を除去する手術です。かつては開腹手術しか方法がありませんでしたが、近年では、衝撃波や内視鏡による身体への侵襲が少ない手術が進歩したため、結石を開腹手術で除去する症例は激減しています。
尿路結石症診療ガイドライン2013より引用
尿管結石の再発は5年間に約半数と言われています。再発予防のためには、身体に結石の元となる成分が蓄積しないように食生活を見直す必要があります。
・シュウ酸が含まれる食品は摂り過ぎない
シュウ酸は水に溶けるため、シュウ酸が多く含まれる野菜を食べるときは、茹でたり流水にさらすことでシュウ酸の量を減らすことができます。ほうれん草では3分間茹でることでシュウ酸の量が37~51%程度まで減少し、また、おひたしにすると絞り汁の中に含まれるシュウ酸の約半分が喪失することが分かっています。
尿路結石症診療ガイドラインより引用
結石の予防:生活での工夫
・1日に2L以上の水分を摂る
結石を尿と一緒に体外に排出するためには、尿量が必要です。また、水分をたくさん摂って尿が薄まると結石を作る成分が溶けやすくなるため結石ができにくくなります。心臓や腎臓などに持病がある人は持病が悪化する可能性もあるため、必ず医師に1日に摂取しても良い水分量を確認しましょう。ジュースやアルコール、玉露や煎茶はコーヒーは結石をできやすくするシュウ酸を多く含んでいるため、水分補給は水や麦茶などで行うのがベストです。
・カルシウムを600~800mg程度摂取する
カルシウムが不足すると、腸でシュウ酸などと結合できず便として排泄できなくなってしまうため、十分な量のカルシウムを摂取する必要があります。特にシュウ酸が多く含まれる食品を摂るときは、カルシウムを一緒に摂ることを心がけましょう。
・脂肪分の多い食品を摂り過ぎない
脂肪分を多く摂り過ぎると、吸収されずに腸に残った脂肪酸をカルシウムが結合してしまい、シュウ酸がカルシウムと結合できずに結石を作りやすくしてしまうため、脂肪分の多い食品は控える必要があります。
・プリン体が多く含まれる食品は控える
プリン体は尿酸を作り出し結石の原因となることがあります。特に高尿酸血症や痛風がある人は注意しましょう。
・クエン酸を積極的に摂る
健康な人の尿のpHは弱酸性ですが、肉類を多く摂ると尿が酸性に傾き、結石ができやすくなります。クエン酸は尿をアルカリ化する効果があり、結石形成予防に効果があります。クエン酸は果物や梅干に含まれる酸味のある成分です。ビタミンCとは違う成分であるため、誤ってビタミンCのサプリメントなどで過剰に摂らないようにしましょう。ビタミンCは体内で代謝されるとシュウ酸を産生してしまいます。通常の食事から摂る分には問題ありません。
・夕食は軽めにし、夜遅くには摂らない
就寝中は水分を摂らないため尿が濃縮されて結石ができやすくなります。そのため、夜遅くに食事を摂らないようにしましょう。夕食から就寝まで4時間程度間隔をとることが良いとされています。
・砂糖や塩分を摂り過ぎない
砂糖や塩分の過剰摂取も結石ができやすくなる原因となります。インスタント食品や漬物、菓子類などは控えましょう。
・1食1皿を目安に野菜を摂る
野菜に含まれるマグネシウムは結石の形成を予防します。また、野菜はアルカリ性食品であり酸性化した尿の是正に不可欠な食品です。野菜にはシュウ酸も含まれているため食べすぎはいけませんが、全く食べないのは健康を害す要因となります。食事は栄養バランス良く食べることが大切です。1食1皿程度であれば必要以上に神経質になることはありません。
・穀物を積極的に摂る
穀物にはマグネシウム、食物繊維が多く含まれているため結石の形成予防になります。