高血圧
高血圧について
1:血圧に関して
2:どのくらいから高血圧なの?
3:血圧を測るタイミング、回数、姿勢は?
4:血圧が上がる原因や下がる原因?
5:高血圧の症状
6:高血圧を放置すると何が悪いか?
7:高血圧の治療は?
最後に:当院での治療の流れ
血圧に関して
そもそも、血圧とは血液が血管(動脈)を流れる際に内側にかかる圧力のことを表します。しばしば、血圧の“上”とか“下”という言い方をしますが、上の血圧は心臓が収縮して血液を送り出したときの「収縮期血圧(最高血圧)」のことで、下の血圧は心臓が拡張したときの「拡張期血圧(最低血圧)」のことです。
どのくらいから高血圧なの?
収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上のとき、高血圧と診断されます。しかし、近年高血圧の診断基準も変化しており、今後は世界的な流れに従って基準も引き下げられるかもしれません。
血圧を測るタイミング、回数、姿勢は?
高血圧の判定では診察室血圧よりも家庭血圧にもとづくほうが優先されます。これは、脳卒中や心筋梗塞などの発症予測として診察室血圧より家庭血圧のほうが優れていることが先行研究でわかったためです。通常、病院に行くと緊張して血圧が上がることが多いため、家庭血圧は診察室血圧より収縮期、拡張期ともに5mmHg低めです。
測定のタイミングは、朝の起床後1時間以内の食前で排尿後、夜の就寝前の2回が推奨されていますが、まずは1日1回でも測定する習慣が大切です。測定の回数は1回で大丈夫です。
測定の姿勢は、イスや正座やあぐらなどの日常の座った姿勢で、1〜2分安静にした後、上腕(肘関節より上)に腕帯をピッタリと巻き測定します。測る腕の高さが心臓の高さ(乳頭の位置)になるように注意する必要があります。
血圧が上がる原因や下がる原因?
血圧は、心臓から押し出される血液の量(心拍出量)と、血管の太さ(正確には血管内径)・血管壁の弾力性によって決まります。血液の量が多ければ血管の壁には強い圧力がかかり、血圧が高くなります。また、血管が硬く細くなると血圧が上がります。
血圧を上げるもの :塩分の摂取過多 / 加齢 / ストレス / 激しい運動をしたとき / 寒さ(冬) / 外気温の急変(入浴時の脱衣やいきなり熱いお風呂に入ったとき、冬季に暖かい室内から外出するときなど) / 睡眠不足 / 過度のアルコール摂取 / 排便時などの力み / 日常の運動不足 / 肥満・過体重 / 遺伝による体質 / 動脈硬化などの病気 /性格(すべてを一人で抱え込むタイプの人)
血圧を下げるもの:休養 / 睡眠 / 運動習慣 / 暑さ(夏) / 入浴(ぬるめのお湯で) /少量のアルコール摂取
高血圧の人の大部分は、血圧を上げる原因を特定できない「本態性高血圧」というタイプです 。腎臓や神経系などの何らかの遺伝的な異常に、塩分の摂りすぎや過食などの生活習慣・環境の要因が加わって起こります。
患者さんの数は少ないですが、血圧を高くする明らかな原因があって高血圧になっている場合もあり、「二次性高血圧」といいます。腎臓の病気や内分泌の病気などが該当します。二次性高血圧では多くの場合、その原因となっている病気を治療すると、血圧が下がります。
高血圧の症状
多少血圧が高くても、自覚症状がないのがふつうです。血圧がかなり高いときは、頭痛やめまい、肩こりなどが起きやすくなります。しかし、こういった症状は血圧とは関係なしに現れるので、高血圧は自覚症状があてにならない病気です。
高血圧を放置すると何が悪いか?
高血圧状態では、血管壁につねに強い圧力がかかっています。血管壁はその圧力に対応して、次第に厚く硬く変化し、動脈硬化が進行しやすくなります。その結果、血管の弾力性が失われて、血管内部はますます狭くなり、血圧がさらに上昇する悪循環に陥ることがあります。この悪循環が続くと、やがて「合併症」が起こることもあります。血管の多い臓器ほど合併症が起きやすく、影響はまず、血管壁が弱い細い血管に現れ、関連する臓器が障害されます。 特に影響を受ける臓器は、脳、眼(網膜)、腎臓などです。さらに、高血圧が長期間続き、太い血管の障害が起きると、脳卒中(脳梗塞や脳出血)や心臓病(狭心症や心筋梗塞)、あるいは動脈瘤破裂などの生命を脅かしたり、身体に障害を残すような重い病気が起こってしまうことがあります。
高脂血症、糖尿病、喫煙などが併存すると動脈硬化の進行に拍車がかかり悪いと言われています。各疾患に関してはリンクを参照ください。
各臓器障害について
脳:脳の血管が詰まる脳梗塞と、血管が破れる脳出血があります。発作時は麻痺や舌のもつれ、めまい、嘔吐、意識障害などが起きます。
眼(網膜):眼底出血などが起こり、視力が低下することもあります。
心臓:冠状動脈の動脈硬化による狭心症や心筋梗塞、高血圧に対応し心臓がオーバーワークを続けた結果生じる心肥大(心臓の壁が厚くなった状態)、それらによる心不全などが起きます。
腎臓:尿にタンパクや赤血球が現れたり、むくみなどが現れます。腎機能低下が進行すると、人工透析を受けないと生命を維持できなくなります。
高血圧の治療は?
高血圧の治療目標は、動脈硬化による臓器紹介の予防と進行防止です。そのために、数字を下げることが一つの指標になっています。
治療の目標は、高血圧治療ガイドライン2019によると、まずは130/80mmHg未満を目指します。高齢者であれば過度な降圧によって脳心血管イベントを起こすことがあり注意する必要があります。
①高血圧治療は、まず生活習慣を見直すことから始めます。
そうしないと治療効果が上がらないばかりか、高血圧以外の生活習慣病や合併症が進行してしまうからです。高血圧治療の目的はあくまで合併症を防ぐことで、血圧を下げるのはその手段に過ぎません。塩分の多い食生活や肥りすぎを放置し、薬で血圧だけ下げたとしても、治療の意味は半減してしまいます。 生活習慣での一番のポイントはやはり減塩です。塩分は水分を引きつける作用があり、そのため循環血液量を増やし、 同時に血管を収縮させ血圧を上げます。急に厳しい減塩に取り組むと続かなくなりますから、無理のない程度の減塩から始めましょう。1日1gの減塩で収縮期血圧が約1mmHg低下することが報告されています。外食時にどのお店も味付けが濃いと感じるようになったら、塩分控えめの食生活が定着してきたといえます。
運動は、血管を広げて血行をよくし血圧を下げます。また、減量やストレス解消にもよく、高血圧の治療には欠かせません。ただし、急に激しいスポーツを始めるのではなく、、ウォーキング(早歩き)などの毎日気軽にできる運動から始めましょう。
精神的ストレスは、血管を収縮して血圧を上げます 。かといってストレスをすべて排除することなど不可能ですから、趣味や社会活動などの気分転換になる時間を作ってみましょう。また、疲れた心を休めるため、睡眠は十分とりましょう。寝不足は高血圧の原因の一つです。
アルコールは、長い間飲み続けると血圧が上がり心臓の負担も増えます。目安として、1日に日本酒で1合、ビール大ビン1 本、ウイスキーシングル2杯、ワイン2杯までがよいといわれています。
喫煙は血管を収縮させ、血管壁を傷つけ、動脈硬化の進行を早めるので、合併症の危険がより高くなります。禁煙しましょう。
②薬による治療は、生活習慣を改善しても血圧が下がらない場合に行います。一般的には初診の方であれば、生活習慣改善を2-3ヶ月行なっていただき、血圧を下げる薬(降圧薬)を開始します。 血圧を下げる薬には多くの種類があり、その中から患者さんの血圧のレベルや状態、その他の病気の有無などによって使用する薬を決めます。いくつかの薬を組み合わせて服用したり、服用する量や時間帯が薬によって異なることもあるため、医師の指示にしたがい、途中で自分の判断でやめないようにしましょう。
主な降圧薬とその作用は下記のようになります。
- カルシウム拮抗薬:血管を広げて血圧を下げます。
- ARB、ACE阻害薬:血管を収縮させる体内の物質をブロックして血圧を下げます。
- 利尿薬:血管から食塩と水分(血液量)を抜いて血圧を下げます。
- β遮断薬:心臓の過剰な働きを抑えて血圧を下げます。
高血圧の薬は、一度飲みだすと一生飲み続けなければいけない、と考えている人が多いよう です。たしかに血圧を下げる薬は高血圧の原因を治すわけではありませんので薬をやめると元に戻って高血圧になる可能性は大きくなります。高血圧の患者さんで、降圧薬をやめることができる人はいますが、それには二つの条件が必要です。一つは、薬を使っている条件下で血圧がしっかり正常に下がっていること、もう一つは、減塩・運動・肥満是正など生活習慣の改善ができていることです。
当院での治療の流れ
1:初診 はじめて患者さんから相談を受ける場面です
- 身長、体重、血圧を測定します。必要に応じて、レントゲン、心電図検査、採血検査をおこないます。
- 血圧の値に応じて、この時から降圧薬が開始になる場合もあります。
- また、血圧測定を定期的に行なっていただくように薬手帳もお渡しします。
2:再診 約1週間後
- 検査を行なった場合は検査結果、また降圧薬を処方した場合には効果と副作用症状の有無を確認します。
- 状況に応じて、降圧薬の調整を行なったり、他の合併症がある場合には、その評価を行います。
3:再診 約2-3週後
- 治療の効果を再度確認します。
- 生活習慣改善での質問があれば相談に乗ります。
4:定期受診 原則月に1回
- 血圧が安定したら、定期受診で経過を見ます。基本的に処方は約1ヶ月での処方を行います。大きな変化なく、毎回診察が難しい方で医師に相談ください。
- 定期的に健康診断は受けるようにしてください。
文責:宮内隆政 (総合内科専門医)