舌下免疫療法
舌下免疫療法について
1:アレルギー性鼻炎について
2:アレルギー治療の歴史
3:舌下免疫療法の特徴とメリット
4:舌下免疫療法の注意事項
5:舌下免疫療法の注意点、副作用、どんな人には投与してはダメか
6:治療の流れ
7:舌下免疫療法の費用
アレルギー性鼻炎について
治療の前に、まずはアレルギー性鼻炎について簡単に述べたいと思います。
多くの人が悩まされるものにアレルギー性鼻炎があります。アレルギー性鼻炎は通年性アレルギー性鼻炎と季節性アレルギー性鼻炎(主に花粉症)に分けられます。
アレルギー性鼻炎は鼻粘膜でのI型アレルギー性疾患で、主な症状は発作性反復性のくしゃみ、水様性鼻汁、鼻閉があります。季節性アレルギー性鼻炎で、特にスギ花粉は飛散数が多いうえに飛散距離が長く、長期間飛散する特徴があります。そのため、多くのスギ花粉症患者が比較的長い期間強い症状に苦しんでいます。
原因アレルゲンの多くが同定可能なアレルギー性鼻炎では、今後、舌下免疫療法が治療の柱になることが想定されます。スギ花粉の飛散は北海道南部ではわずかなで、沖縄では飛散しません。また、ダニ・ハウスダストなどの通年性アレルギーの原因物質も重要です。
アレルギー治療の歴史
日本では1963年頃からアレルゲンエキスが市販されアレルギー性鼻炎に対してアレルゲン免疫療法が行われるようになりました。1980年代に入ると、現在のアレルギー性鼻炎治療の中心である抗ヒスタミン薬や鼻噴霧型ステロイド薬が販売されました。それによって、簡便で即効性のある薬剤使用が普及し、アレルゲン免疫療法の実施は減少しました。
しかし、アレルギー性鼻炎の自然寛解は少なく薬物療法は対症療法であることから、アレルゲン免疫療法の関心が再び高まり、2012年に皮下注射法による免疫療法の指針が刊行され皮下注射法によるアレルゲン免疫療法が施行されていましたが、アナフィラキシーを代表とする副反応と注射の痛みの問題が出ました。アナフィラキシーの頻度も約800回に1回と臨床的に無視できない頻度でした。
その後、口腔粘膜を利用した舌下免疫療法が登場し、広く現在でも用いられています。舌下免疫療法はアレルゲンが配合された治療薬を「舌の下」にしばらく含んでから飲み込み、少しずつ免疫をつくっていくアレルゲン免疫療法の一種です。
現時点ではスギ花粉に対する舌下免疫療法薬(商品名「シダキュア」「シダトレン」)、ダニ抗原に対する舌下免疫療法薬(商品名「ミティキュア」、「アシテア」)があります。
舌下免疫療法の詳細は下記のサイトをご覧ください。
舌下免疫療法の特徴とメリット
舌下免疫療法は、皮下注射法に比べて痛くないことや自宅でできるといったメリットがあります。 正しく治療が行われると、スギ花粉症の場合は初めてのスギ花粉飛散シーズンから、ダニアレルギー性鼻炎の場合は治療を始めて数ヶ月後から効果が期待され、年単位で治療を継続することで最大の効果が得られると考えられています。
長期間正しく治療が行われると、アレルギー症状を改善し、治療終了後も長期にわたり症状をおさえること、または症状が完全におさえられない場合でも、症状をやわらげ、症状緩和の薬の使用量を減らすことも期待できます。
また、小児から使用することができます。子供の治療は、適応上では何歳からでも可能ですが、治療を上手くできるかを考えると5歳くらいから可能と考えています。また、治療には採血による検査が必要ですので、採血をさせてくれるお子様が適応となります。
舌下免疫療法の注意点、副作用、どんな人には投与してはダメか。
舌下免疫療法の開始時期は、スギ花粉の場合は花粉が飛散する直前や飛散している時期に治療を開始すると効果の面、安全性の面でも問題があります。そのため、6月から12月末までに開始する必要があります。ダニの場合は治療開始時期に特に制限はありません。
副反応としては、アレルゲンを投与することから、服用後にアレルギー反応がおこるおそれがあり、まれに強いアレルギー症状が発現するおそれがあります。そのため、初回の治療では過度なアレルギー反応がないかを治療を行い院内で30分待機して、様子を確認します。
主な副作用
- 口の中のもの (口内炎、口や舌の下の腫れ、)
- 喉の痒み、咳
- 喘息様症状
- 頭痛
以下の方の治療は適応外になります。
- スギ花粉症/ダニアレルギーでは無い方
- 5歳未満の方
- 重症の喘息を合併している人
- 癌の治療をしている人
- 免疫不全などの病気の方や治療で免疫抑制剤を使用している人
以下の方は治療に際して注意が必要です。
- 妊娠している、もしくは、近いうちに妊娠希望の人、授乳中の方
- β遮断薬、三環系抗うつ薬などを内服している人
- 重篤な心臓の病気を合併している人
- 口の中に傷や炎症がある、抜歯後の方
舌下免疫療法の注意事項:
- 治療前に症状が対象アレルゲン(現在のところ、スギかダニ)によるものかの診断が必要なため、問診と採血検査を行います。
- 舌下免疫療法は長期的な治療期間が必要になります。まずは、2年ほど治療を行い、効果を確認して、効果のある人の場合には合計4〜5年の治療を相談しながら行います。終了しても効果は持続すると考えられています。終了して何年も経過して、症状が悪くなる人が出てきますが、その時点で再度1~2年間の舌下免疫療法を行うと、効果が元に戻ると考えられます。
- スギ花粉の舌下免疫療法の開始は6月から12月に限ります。ダニは季節の定めについてはありません。
治療の流れ
1:初診 初回診察をさせていただきます。
まず、アレルギー症状の問診・診察をさせていただきます。ここで内服薬や合併症の確認を行います。血液検査を行い、スギ花粉やダニに対しアレルギーがあるかを調べます。(もし、過去に血液検査を受けたことがある人は結果がわかるものがあれば、省略できます。)
2: 舌下免疫療法の初回投与
血液検査の結果が分かった段階で、治療の説明をして治療薬を開始します。初回治療は医師の見守りのもと患者さんご自身で服薬していただき、30分間は急激な副反応が起きないかを院内で様子を見て、お待ちいただきます。問題なければ、1週間分処方させていただきます。
3:再診 初回投与から1週間後に来院
体調の確認や副反応の有無などを確認し問題がなければ、舌下免疫薬の容量を増やし、投与を継続します。
4:再診 維持期では月に一回の通院が必要になります。
舌下免疫療法の費用
舌下免疫の治療のみの処方の場合には、医院での治療費と薬局での薬代と合わせて1ヵ月あたりスギ花粉の舌下免疫薬は3割負担で2,000~2,500円程度の負担、ダニの舌下免疫療法薬は3割負担で3,500円程度の負担になります。1年を通じて治療をするので毎月ほぼ同額の治療費となります。治療開始前の検査が必要となり、5,000円程度の検査費負担がかかります。
ぜひ舌下免疫療法を検討している場合にはご相談ください。