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高脂血症

脂質異常症

1:脂質異常症とは?
2:脂質の種類
3:コレステロールって悪いものなの?
4:脂質異常症を放っておくと
5:脂質異常症の治療は?
6:治療の流れ

 

脂質異常症とは?

血液中の脂質(中性脂肪やコレステロールなど)の代謝バランスが乱れて異常が起こる病気で、生活習慣病の一つです。

我が国では、生活習慣の欧米化に伴い脂質異常症の患者は年々増加傾向にあります。平成29年の調査で脂質異常症の継続的に治療を受けている患者数は220万5000人で女性が男性の2.4倍でした。

年齢とともに男女で総コレステロールは変動します。特に女性の場合は閉経前後から脂質異常症が増加し高齢になるにつれて動脈硬化疾患リスクも高くなります。また、家族性高コレステロール血症などの原発性脂質異常症と甲状腺機能低下症、ネフローゼ症候群、糖尿病性・薬剤性などの続発性脂質異常症はしっかりと判断する必要があります。

 

脂質の種類

脂質にはコレステロールと中性脂肪があり、コレステロールはさらにHDLコレステロール(善玉コレステロール)、LDLコレステロール(悪玉コレステロール)の2種類があります。

下表のように

  • LDLコレステロールが140mg/dL以上の場合は高LDLコレステロール血症
  • HDLコレステロールが40mg/dL未満の場合は低HDLコレステロール血症
  • トリグリセライドが150mg/dL以上の場合を高トリグリセライド血症

と呼ばれます。

脂質異常症の診断は空腹時採血(10時間以上の絶食)が推奨されています。

 

各脂質に関して簡単に記載していきます。

LDLコレステロール

LDLは、肝臓から全身の血管・組織にコレステロールを運ぶ働きをしています。全身の組織や細胞は主にこのLDLからコレステロールを取り込みます。コレステロールは、細胞内に取り込まれて、ホルモン産生、細胞膜の形成などの役割を担いますが、血中に多く存在すると血管壁に沈着、蓄積し、血管の壁で炎症反応を起こし、血管の内壁を傷つけ、動脈硬化に起因する心筋梗塞や脳梗塞などの誘引となることが知られています。

HDLコレステロール

HDLは、LDLコレステロールによって全身の血管や組織に運ばれたコレステロールのうち余ったコレステロールを回収し肝臓に運ぶ働きをしています。そのため、HDLコレステロールが低いと動脈硬化の抑制がされにくくなり、動脈硬化の進行に寄与します。

中性脂肪

体の活動のエネルギー源、皮下脂肪として体温保持の働きをします。
必要以上に皮下脂肪が溜まると肥満になり、肝臓に溜まると脂肪肝として肝臓の働きが悪くなります。

コレステロールってそもそも悪いものなの?

コレステロールは摂りすぎることはよくないです。しかし、コレステロールは下記に示すような生命維持のために必要な成分の一つです。

  • 細胞膜の構成成分
  • ホルモンの原料
  • 胆汁酸の原料

脂質異常症を放っておくと?

脂質異常症は自覚症状が現れないのがほとんどです。

しかし、症状がないうちに脂質異常が進行し、徐々に動脈硬化が進むため厄介な疾患です。脂質異常症は狭心症・心筋梗塞などの心疾患や、脳梗塞・脳出血などの脳血管疾患を発症する危険因子となります。

また、高血圧糖尿病高尿酸血症喫煙なども同様に動脈硬化のリスクとなるため、リスクの評価を行います。下記の図は、冠動脈疾患予防絡みたLDLコレステロール管理目標設定のものですが、参考になります。

 

また、世界的には今後10年のASCVDイベント(脳卒中や心筋梗塞など)を計算して予測できます。ぜひ、計算してみてください。

ASCVD Risk Calculator

 

【ASCVDリスクと対策】
  • 5%未満 : 低リスク
  • 5〜7.4% : ボーダーライン
  • 7.5-19.9% : 中等度リスク → LDLを30%以上下げる必要あり。
  • 20%以上 : 高度リスク → LDLを50%以上下げる必要あり。

 

脂質異常症の治療は?

基本は「食事療法」や「運動療法」による生活改善が重要です。これは、全ての年齢に置いて推奨荒れています。もしも、続発性脂質異常症の場合は、原因となっている疾患の治療を行います。

 

食事療法

栄養バランスを考えて、規則正しい食生活を送ることが重要になります。

  1. 肉類のおかずよりも魚介類や大豆製品のおかずを取りましょう。特に加工肉(ソーセージ、ベーコン、ハム)は避けましょう。
  2. 魚卵を含む卵、レバーなどの内臓系や肉の脂身などコレステロールを多く含むものは注意しましょう。
  3. 少量のアルコールは構わないですが、過度の飲酒は避けましょう。アルコールを摂取すると食欲が増すので注意です。また、間食や甘い飲み物は避けましょう。特に中性脂肪が多い方は注意が必要です。
  4. 油を使った料理は控えましょう。揚げ物など。

  5. 野菜、海藻、キノコなど食物繊維の多い食品をしっかり摂りましょう。緑黄色野菜、海藻、きのこ類など食物繊維を多く摂取すると、腸管での脂肪吸収を抑えます。

運動療法

運動によってHDLコレステロールが増加することが知られています。

運動効果について、最近の報告では、少なくとも週120分の有酸素運動が必要であること、1回あたりの運動時間を長くするほど改善効果が高いことがわかっています。

運動の具体的なものとしては、ウォーキングやサイクリング、水泳、ヨガなどの有酸素運動を1日30分以上、週120分以上できるといいと言われています。

 

薬物療法

生活習慣を改善しても高LDL血症が改善しなかったり、すでに狭心症、心筋梗塞、脳梗塞などにかかっている場合には薬物治療を検討します。薬物療法とともに生活習慣の改善は不可欠です。

下表のようにリスクを評価することで、治療目標を決定します。表の1次予防とは、疾患を起こさないようにすること、2次予防は疾患の最初を防ぐことです。

薬物療法で使用される薬は、「コレステロールを下げる薬」、「コレステロールと中性脂肪を下げる薬」、「中性脂肪を下げる薬」の大きく分けると3種類があります。

患者さんの状況に応じて処方薬は調整します。基本的にはHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン系薬剤)が第一選択になります。

 

コレステロールを下げる薬

  •  スタチン系薬剤:第一選択になります。肝臓でのコレステロールの合成を阻害します。
    強力スタチン:ロスバスタチン(クレストール®︎)、アトルバスタチン(リピトール®︎)、ピタバスタチン(リバロ®︎)
    中等スタチン:プラバスタチン(メバロチン®︎)、シンバスタチン(リポバス®︎)、フルバスタチン(ローコール®︎)
    *腎臓の悪い人やフィブラート系薬剤などを併用している場合は、横紋筋融解症を起こすことがあります。肝機能障害、腹痛などの胃腸障害が起こることがあります。

  • 小腸コレステロールトランスポーター阻害薬:小腸でコレステロール吸収を阻害します。
    エゼミチブ(ゼチーア®︎)
    *便秘、倦怠感、筋肉痛などが起こることがあります。

  • 陰イオン交換樹脂:コレステロールの体外排泄を促進します。中性脂肪を増加させることがありますので中性脂肪値が250mg/dL以上の人は注意して下さい。
    コレスチミド(コレバイン®︎)
    *便秘、腹部膨満感、嘔気、腹痛が起こることがあります。

  • プロブコール:肝臓でのコレステロール産生抑制、胆汁酸への排泄促進をします。
    プロブコール(プロブコール®︎)
    *下痢、胃部膨満感、胸やけ、心電図の異常などが出ることがあります。

 

コレステロールと中性脂肪(トリグリセライド)を下げる薬

  • ニコチン酸誘導体:肝臓での中性脂肪の合成を抑え、LDLコレステロール値を低下させる作用があります。また、HDLコレステロールを増やす作用もあります。
    ニセリトロール(ペリシット®︎)、ニコモール(コレキサミン®︎)、ニコチン酸トコフェロール(ユベラN®︎)
    *血管拡張作用をもつため顔のほてり、頭痛が見られることがありますが、継続することにより次第に慣れてきます。

 

中性脂肪を下げる薬

  • フィブラート系製剤:中性脂肪の合成を抑えます。HDLコレステロール値を上げる効果もあります。抗血栓薬(ワルファリン)や糖尿病薬を服用している人は併用することにより、併用薬の作用を強くすることがありますので、注意して下さい。
    ベザフィブラート(ベザトール®︎)、フェノフィブラ-ト(リピディル®︎、トライコア®︎)、ペマフィブラート(パルモディア®︎)、クリノフィブラート(リポクリン®︎)、クロフィブラート(ビノグラック®︎)
    *肝障害とミオパチーが重要です。特にフェノフィブラートでは肝障害の発現頻度が高率で約25%に達します。しかし、一過性のことが多く、投与を継続中に自然軽快することが多いです。横紋筋融解症は腎機能が低下した症例に発症しやすく、ベザフィブラートでは血清クレアチニン値は2.0mg/dl以上、フェノフィブラートでは血清クレアチニン値は2.5mg/dl以上の症例には投与禁忌となっています。

  • 多価不飽和脂肪酸:魚の脂などに含まれるEPA(イコサペント酸)から作られている薬剤です。作用は余り強くありませんが、中性脂肪を減らしたり、血液を固まりにくくする作用があります。
    イコサペント酸エチル(エパデール®︎)、オメガー3脂肪酸エチル(ロトリガ®︎)
    *胃部膨満感、食欲低下、悪心、嘔吐、腹痛などが現れることがあります。血液を固まりにくくする薬剤を服用中の人は併用すると出血しやすくなるので注意して下さい。

 

治療の流れ

1:初診 はじめて患者さんから相談を受ける場面です
  • 身長、体重、血圧を測定します。必要に応じて、採血検査をおこないます。
  • 健康診断や家族歴に応じて、この時から薬が開始になる場合もあります。
  • また、生活習慣指導も行っていただきます。
2:再診 約2週間後
  • 検査を行なった場合は検査結果、また薬を処方した場合には副作用症状の有無を確認します。
  • 生活習慣改善での質問があれば相談に乗ります。
3:定期受診 原則月に1回
  • 血圧が安定したら、定期受診で経過を見ます。基本的に処方は約1ヶ月での処方を行います。大きな変化なく、毎回診察が難しい方で医師に相談ください。
  • 定期的に健康診断は受けるようにしてください。

 

文責 宮内隆政 (総合内科専門医)

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