睡眠時無呼吸症候群について
1:はじめに
2:睡眠時無呼吸症候群とは?
3:SASの種類
4:SASの危険性
5:SASの原因
6:SASの診断のためにできること
7:治療について
はじめに
最近、ご家族の方から「いびきがひどい」「呼吸が止まっている」などと言われたり、「日中眠い」と思ったりする事はありませんか?
もしかするとそれは、睡眠時無呼吸症候群のサインかもしれません。
今回睡眠時無呼吸症候群について話していきたいと思います。
睡眠時無呼吸症候群とは?
睡眠時無呼吸症候群(以下SAS)は、睡眠中に10秒以上の呼吸停止が1時間に5回以上ある状態をいい、昼間の眠気や倦怠感などの自覚症状を伴う病態のことです。
昼間の眠気、集中力低下により、自動車事故を起こしやすく、患者個人の身体的な損失だけでなく、社会的な損害も問題となっています。子供でも扁桃腺が大きくSASを起こすことも多くあります。
SASの種類
・閉塞性睡眠時無呼吸
空気の通り道である気道が塞がり、呼吸が止まってしまうタイプで、SASの患者の90%がこれに該当します。
原因としては、肥満による首やのど周りの脂肪沈着、顎の小ささなどが挙げられます。
・中枢性睡眠時無呼吸
脳にある呼吸中枢の機能異常によって無呼吸になるタイプです。気道が塞がっていないため、いびきをかかないのが特徴です。
心不全や脳血管疾患などと関連があると考えられます。
SASの危険性
日中、突然激しい眠気に襲われてしまうため、SASが原因となった交通事故が何度も起きています。世界的に報道されるような重大事故も多数あり、注目されています。
また、SASを放置しておくと動脈硬化が進行し、心疾患や脳血管疾患になる危険性が高くなります。生活習慣病との関わりも深く、SASの50~80%に高血圧、30~50%に高脂血症を伴い、高血圧症の30~50%にSASを認めるという報告もあります。そのほかに心臓、脳疾患、糖尿病も関連しているので、触れていきたいと思います。
・心臓疾患
心臓病、血管病は心臓突然死、冠動脈疾患(狭心症と心筋梗塞)、大動脈疾患(大動脈瘤など)、心不全、肺高血圧、および心房細動など実に多彩です。
・脳血管病変
SASの重症例では、脳卒中発症リスクが3.51倍にもなることが報告されています。
・糖尿病
SASの重症度が増すに連れて、糖尿病合併割合が増えることが指摘されています。
SASの原因
軟口蓋や舌根部分で気道が閉塞してしまい、息が出来ない状態になるために発生します。
小顎、下顎後退、軟口蓋肥大、口蓋扁桃肥大、 巨舌などが単独や複合して影響し、上気道が狭くなることが原因と考えられます。
遺伝子的に欧米人に比べアジア人は顎が小さく特有の顔・顎の骨格であり、肥満がなくてもSASが発生することがあります。
また一般的に加齢に伴ってSASが増加する傾向にあります。
重症SASにみられる症状とその頻度は次のとおりです。
いびき(90%)、昼間眠気(55%)、睡眠中の呼吸停止(62%)、起床時の口内乾燥(43%)、悪い寝相(32%)、熟睡感の欠如(31%)、倦怠感(25%)、夜間の2回以上の排尿(21%)、寝汗(20%)などです。
SASの診断のためにできること
SASの診断にあたって
- エプワース眠気尺度
- 簡易検査
- 精密検査
が行われます。
各検査についてそれぞれ見ていきたいと思います。
エプワース眠気尺度
チェックリストを使って眠気を主観的に評価するために、Epworth Sleepiness Scale(ESS エプワース眠気尺度)が広く用いられています。各質問の点数を合計して、11点以上で異常な眠気と判断され、SASの可能性があります。
合計点11点以上で、SASに罹患している場合は治療を要します。
合計点11点以上が治療を要するレベルですが、11点未満であっても慢性的ないびきをかく人、睡眠時に呼吸が止まる人、日中頻繁に眠気を感じる人もSASの可能性があります。
簡易検査
自宅で取り扱い可能な検査機器を使って、患者様がご自宅で検査する簡易検査です。検査機器は当院から検査会社を通して貸与します。当院では帝人にお願いをしています。
手と顔にセンサーを付けて、いつものように就寝します。これで睡眠中の呼吸と酸素濃度を計測、記録します。返却された機器のデータを分析して診断します。
検査結果はAHI(Apnea Hypopnea Index:無呼吸低呼吸指数)として示されます。これは、1時間当たりの無呼吸や低呼吸の平均回数です。
AHIが20以下の場合は、生活習慣の改善やマウスピースなどの治療を検討します。
AHIが20~40の場合には、より詳細な検査である終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を受けてから、その結果に合わせた治療を行います。
AHIが40以上の場合にはCPAP(持続陽圧呼吸療法)による治療をおすすめしています。
費用は保険適用の3割負担で約3000円、1割負担で約1000円です。
精密検査
精密検査は、終夜ポリソムノグラフィー(以下PSG)を用います。
一般的には入院して行います。
睡眠の状態を含めて睡眠中の生体情報をより多く、正確に知るために大変有用な検査です。PSG検査の場合、簡易検査で取得する情報のほかに脳波や筋電図などの様々なセンサーを装着して就寝します。得られた情報から睡眠の深さ、呼吸の状態、血液中の酸素の状態などを総合的に知ることができます。
当院ではこの検査はできないので、順天堂高齢者医療センターや江東病院に紹介をして検査を行っていただきます。
治療について
- CPAP(経鼻的持続陽圧呼吸)療法
現在、唯一の確実なSASの治療法とされています。酸素マスクをしながら、酸素を送り、就寝します。 - 口腔内装置(マウスピース)
就寝時に口腔内に装着するマウスピースです。専門の歯科医師がオーダーメイドで作成します。主に軽症・中等症のSASに適用されます。 - 外科的手術
口蓋垂軟口蓋咽頭形成術
口蓋扁桃摘出術・アデノイド切除術 その他 - 生活習慣の改善
●減量 ●飲酒と睡眠薬 ●睡眠中の体位 ●禁煙
CPAP療法について
CPAP療法は、現在SAS治療の世界的なスタンダードとなっており、有効性が高く安全性も確立されています。
原理としては、CPAP装置本体から、鼻に装着したマスクを通して設定された陽圧を気道に送り、気道を広げて無呼吸が起きないようにします。
効果は、CPAP治療を適切に行うことで、睡眠中の無呼吸やいびきが解消し、熟眠感が得られ、すっきりと目覚めることができます。治療を続けることで、眠気がなくなる、夜間のトイレの回数が減る、血圧を下げるといった効果も見られます。CPAP療法は継続して使い続けることが重要です。
SASの継続通院での治療費
月一回の通院治療の費用はCPAPレンタル料を含めた場合、患者さまの自己負担(3割)で約5,000円となります。CPAP治療を継続する際の鼻マスク、チューブなどの消耗品も支給されるので自分で購入する必要はありません。
SASの治療費
月1回の通院費用・・・約5,000円
文責:宮内隆政