あなたの亜鉛不足してませんか?
意外に増えている亜鉛欠乏症
亜鉛は身体の様々な機能を維持していくために必要な成分のひとつです。
亜鉛は体内に約2g含まれます。
亜鉛は蛋白合成(アミノ酸代謝)に関わる酵素のはたらきに必要なため、不足すると蛋白合成が低下し、免疫機能の低下にもつながります。骨、筋肉、肝臓、腎臓など全身に分布し生体内の300以上の酵素反応に関与しており、亜鉛不足による症状は実に多彩です。
近年は
①偏食の増加・ファーストフードや加工食品の普及で亜鉛摂取不足
亜鉛は肉類や魚介類などに多く含まれています。また、食物繊維や青菜に含まれるシュウ酸は亜鉛の吸収を阻害するため、肉類や魚介類を食べないベジタリアン、ビーガンなどは不足しやすいと言われています。亜鉛の吸収を阻害する食品添加物を含む加工食品やレトルト食品も、亜鉛不足を招きます。
②慢性肝疾患の亜鉛吸収障害
③アルコール過飲や多剤内服による亜鉛過剰消費
アルコールの代謝に関わる酵素は、亜鉛を材料としています。お酒を飲むことで体内の亜鉛が使用されるだけでなく、アルコールは尿中への亜鉛の排泄を促します。
が増えておりその臨床像が注目されています。
亜鉛と鉄は同時に欠乏しやすい
亜鉛欠乏は男性に起こりやすいです。亜鉛は精子に多く含まれ、さらにアルコールを分解する際に使われるので、摂取量が多ければそれだけ消費されてしまいます。
また、加工食品は亜鉛の含有量が少ないため、十分な量を身体に取り入れることができません。
亜鉛と鉄が含まれている食品は共通するため、亜鉛欠乏と鉄欠乏が同時に起こりやすいのも特徴です。
亜鉛欠乏の症状
良く知られているのは味覚障害です。
それ以外に、
亜鉛欠乏性貧血
皮膚炎
口内炎
脱毛症
難治性の褥瘡
食欲低下
発育障害(小児で体重増加不良、低身長)
性腺機能不全
不妊症
易感染性
低アルブミン血症
免疫機能障害
神経感覚障害
認知機能障害
など多彩な症状があります。
亜鉛と糖尿病の関係
近年、糖尿病患者に亜鉛サプリメント与えて空腹時血糖、HbA1c、血清インスリンおよび血清亜鉛濃度への効果を分析した結果、亜鉛サプリメントの摂取は空腹時血糖値の低値と関連が認められたことが報告されています。
採血での亜鉛欠乏症の診断
血清亜鉛値は、日本臨床栄養学会では基準値を80µg/dL~130µg/dLとしています。
亜鉛欠乏症の治療
・まずは亜鉛を多く含む食事を積極的に摂ることを心がけます。
亜鉛の多い食事は下記のものになります。
注意点として亜鉛の吸収を一緒に食べると促進するものや妨げるものがあることです。
吸収を促進するもの:肉類、魚類に多く含まれる動物性たんぱく質(グルタミン等のアミノ酸)、ビタミンC、クエン酸、リンゴ酸等を含む酸性の食べ物
吸収を妨げるもの:コーヒー、オレンジジュース、カルシウム、未精製の穀類や豆類に多く含まれる「フィチン酸」があります)
推奨される1日の亜鉛の摂取量は、成人男性10mg、成人女性8mg(妊婦は+2mg、授乳婦は+3mg)です。
薬物治療
低亜鉛血症になると、食事療法だけでは血清亜鉛値は改善しにくいといわれています。
そのため内服薬を用いることがあります。
・ノベルジン錠、顆粒(成分:酢酸亜鉛)
- 2015年に発売された、2021年現在、唯一亜鉛欠乏症に保険適応のあるお薬です。
- 亜鉛含有量が多く、効率良く亜鉛の補充ができます。
・プロマックD錠、顆粒(成分:ポラプレジンク)
- 昔から使われている胃潰瘍の改善薬ですが、亜鉛が含まれており、近年では亜鉛補充で使用される事もあります。
- 元々は胃潰瘍のお薬ですので、亜鉛欠乏症に対する保険適応はないお薬です。
- 副作用が少なく、ノベルジンで副作用が出てしまうような方でも使いやすいお薬です。
- ノベルジンに比べ、亜鉛含有量は少なく、十分な補充ができない場合があります。
(ノベルジン錠25mg:亜鉛含有量25mg、プロマックD錠75mg:亜鉛含有量17mg) - ノベルジンに比べ、1錠あたりの値段が安くなっています。
(ノベルジン錠25mg:約270円、プロマックD錠75mg:約25円)
当院では亜鉛も定期的に測定しています。
高齢者の方は亜鉛不足の患者さんが多いです。ぜひ、亜鉛も重要なミネラルなのでチェックしましょう。
文責:総合内科専門医 宮内