日本脳炎ワクチンは3歳より前に打つ必要があるの?
日本脳炎ワクチン接種は3歳から?
日本脳炎ワクチンの『標準的な』接種は3歳からとされています。
その理由は、長年、日本脳炎を発症する年齢は3歳以上で、3歳未満で発症することはないだろう、と考えられていたからです。
しかし、近年、3歳未満でも発症する例がみられるようになりました(高知県で2009年に1歳児、沖縄県で2011年に1歳児、千葉県で2015年に生後11か月児)。それを受けて、日本小児科学会では、地域によっては、生後6カ月からのワクチン接種を推奨しています。それに合わせて、生後6カ月からの日本脳炎ワクチンを推奨する医療機関が増えてきています。
生後6ヶ月から接種するメリット
①0~1歳の時期は接種を要する他のワクチンが多数あり、時期が合えば同時接種で来院回数を減らすことができる。
②3歳以後から開始の場合だと、日本脳炎ワクチン接種のためだけの来院となるが、それが不要になる。
③3歳からの日本脳炎ワクチンをうっかり忘れる場合があり、そのような接種もれを防止できる。
④3~4歳児は、最もワクチン注射を怖がる年齢で、接種前から大泣きしたり暴れたりしがちだが、それを回避できる。
⑤日本脳炎の予防を想起から行うことができる。
⑥現在、外出自粛の場合に来院回数を減らせることでその目的にもかなう。
3歳以降まで待って接種するメリットは基本的にないと考えています。
日本小児科学会も、「最近、日本脳炎患者が発生した地域に居住する小児は6ヶ月から接種することを推奨する」と言っています。日本小児科学会の記載は下記の通りになっています。
日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有する蚊にさされることで感染します。日本脳炎ワクチンの普及と生活環境の改善により、日本脳炎患者発生は最近少なくなっていますが、毎年各都道府県で実施されているブタの抗体保有状況をみると日本脳炎ウイルスは西日本を中心に広い地域で確認されています。
現在、日本における日本脳炎ワクチンの1期の標準的接種時期は、初回接種として3歳からとなっています。ただし、定期接種の1期として接種可能な時期は生後6~90か月となっており、希望すれば生後6か月以上であればいつでも接種可能です。
最近の小児の日本脳炎罹患状況をみると、熊本県で2006年に3歳児、2009年に7歳児、高知県で2009年に1歳児、山口県で2010年に6歳児、沖縄県で2011年に1歳児、福岡県で10歳児、兵庫県で2013年に5歳児の報告があります。また、2015年千葉県において生後11か月児の日本脳炎症例が報告されました。
日本脳炎流行地域に渡航・滞在する小児、最近日本脳炎患者が発生した地域・ブタの日本脳炎抗体保有率が高い地域に居住する小児に対しては、生後6か月から日本脳炎ワクチンの接種を開始することが推奨されます。
日本脳炎予防接種の回数・標準的な接種時期について
日本脳炎ワクチンは合計4回接種します。
回数 | 当院の推奨スケジュール | 標準接種月齢 | 備考 | |
---|---|---|---|---|
第1期 | 初回(1回目) | 8か月のB型肝炎と同時 |
1,2回目:3歳になったら
3回目:4歳になったら |
生後6か月~接種可能 |
2回目 |
9か月の時に接種 |
初回から6日以上間隔をあける | ||
3回目 | 1歳半の時に4種混合、水痘ワクチンと同時 | 初回から6か月以上、約1年経過後に受ける | ||
第2期 | 4回目 | 9歳~13歳未満 | 9歳~13歳未満 |
日本脳炎予防接種の副反応(副作用)について
日本脳炎の予防接種では、以下のような副反応が確認されています。
- 発熱
- 接種部位の腫れ、赤み(3%未満)
- アナフィラキシー、けいれん、急性散在性脳脊髄炎(0.001%未満)
日本脳炎を3歳未満で打ち始めた場合のワクチンスケジュール
順調に同時接種した場合の当院のワクチンスケジュールの例 は以下のようになります
- 1回目:生後2か月~ヒブ・肺炎球菌・B型肝炎・ロタの4種類
- 2回目:生後3か月~ヒブ・肺炎球菌・B型肝炎・ロタ・四種混合 の5種類
- 3回目:生後4か月~ヒブ・肺炎球菌・四種混合・ロタ の4種類
- 4回目:生後5か月~四種混合・BCG の2種類(当院ではBCG接種ができません)
- 5回目:生後8か月~B型肝炎・日本脳炎1)の2種類
- 6回目:生後9か月~日本脳炎2) 1種類
- 7回目:生後1歳~ ヒブ・肺炎球菌・MR・水ぼうそう・(おたふくかぜ)の4(5)種類(おたふくかぜは任意接種ですが接種を推奨!)
- 8回目:生後1歳6か月~四種混合・水ぼうそう・日本脳炎追加) の3種類
- 9回目:年長さんの1年間~ MR・(おたふくかぜ)の1(2)種類
- 10回目:小学六年生~ 二種混合・日本脳炎2期) の2種類
小学六年生(女性)~ HPVワクチン接種も!
日本脳炎とはどんな病気なの?
感染経路について
日本脳炎ウイルスは、ブタなどの動物の体内で増殖します。その動物の血を蚊(コガタアカイエカ)が吸い、その後ヒトを刺したときに感染します。日本脳炎ウイルスがヒトからヒトへと感染することはありません。西日本に多く生息していると言われています。
おもな症状・死亡率など
6~16日ほどの潜伏期間を経て、発熱、吐き気、頭痛などの症状を起こします。
日本脳炎に感染しても、多くの人は症状がほとんど出なかったり、風邪程度の症状で終わり、重い症状がでるのは 100~1000 人に 1 人といわれてます。しかし一旦脳炎が発症すると死亡率は 20-40%、回復しても半数以上の人に重い後遺症が残ります。
日本脳炎の予防法について
日本脳炎ウイルスをヒトにうつすコガタアカイエカは、夏に多く発生し、水田や沼地を好む習性があります。また、日没以降に活発に活動するため、夏場の夜にそういった場所に近づかない、肌を露出させない、虫よけスプレーを使用するといったことで、感染を防ぐことが可能です。
家屋の近くにコガタアカイエカの好む水田や沼地がある場合には、蚊帳を使う、窓の開閉を最小限に留める・開ける場合には網戸を活用するといったことも有効です。
なお、日本脳炎ワクチンの接種によって、日本脳炎の罹患のリスクを75~95%削減できると言われています。
よくある質問
Q:3歳未満だと摂取量が少ないけど効果に違いはないの?
A:日本脳炎ワクチンの接種量は、3歳未満で0.25mL、3歳以上で0.5mLと異なります。しかし1期接種を初回接種から追加接種まで全て0.25mL で済ませた場合でも、効果に問題がないことが確認されていますので、ご安心ください。(2016年2月 公益社団法人日本小児科学会 予防接種・感染症対策委員会の提言より一部抜粋)
Q:接種を3歳前に行いたいんだけど、用紙が届かないんですが。
A:3歳未満で接種を希望される方は、保健所に問い合わせをお願いし、予診票を郵送してもらってください。お手間をかけて申し訳ありません。
文責:総合内科専門医 宮内