鉄が足りない貧血の治療薬として。
[2021.12.22]
鉄欠乏性貧血に悩まされることはありませんか?
今回、貧血の治療について新たに使用できる薬などについてお話していこうと思います
鉄欠乏性貧血って?
鉄は赤血球に含まれるヘモグロビンの材料になっています。鉄分が不足することで材料がなくなりヘモグロビンが低下し貧血になります。
原因は?
原因としておおきく3つに分かれます。
鉄分の摂取が不足している、もしくは吸収不良(拒食、慢性腎不全など)
鉄の利用の増加(思春期、妊娠中など)
鉄が失われる状態(出血、生理など)
鉄欠乏性貧血の治療は?
まず、重要なことは出血をしている場合には、その原因を改善させることです。消化管出血があれば黒色便になることも多く、また生理からの出血量が多い場合には婦人科疾患も否定する必要があります。
鉄欠乏性貧血の治療には、
内服剤:「フェロミア®」、「フェログラデュメット®」、「インクレミン®」、「フェルム®」、「リオナ®」
注射剤:「フェインジェクト®」、「フェジン®」
サプリメント
があります。しかし、内服剤には胃腸障害(悪心、嘔気、胃痛、便秘)が副作用としてよく見られます。
下記に比較のものを提示します。(みどり病院のわかりやすい表を引用させていただいております。)
経口鉄剤の比較:
注射鉄剤の比較:
慢性腎臓病の高リン血症の治療薬であるクエン酸第2鉄水和物「リオナ®錠」が、血液中の鉄を上昇させ、鉄欠乏性貧血の治療効果が認められたことより、2021年に鉄欠乏性貧血にも適応拡大されました。
この薬は、悪心、嘔気などの胃腸障害が鉄の内服剤に比較して少ないことが特徴になります。しかし、下痢の副作用は多くなることには注意が必要です。
リオナの使用に関して:
- 鉄欠乏性貧血には、リオナ250mg 2錠を1日1回、効果が余りみられない場合は、2錠を1日2回に増やして服用します。
- 相互作用は、
キノロン系やテトラサイクリン系の抗生物質や甲状腺治療薬のチラーヂンなどの吸収を抑制するため、注意が必要です。 - 副作用は、下痢が12.4%と比較的多く認めます。
- 貧血改善効果は、他の鉄剤と同等になります。
- リンの低下に関してはほとんど起こすことはありません(腎機能が問題ないため)。
- 便は他の鉄剤と同じように黒くなります。
鉄欠乏性貧血で、治療薬で鉄剤が気持ち悪くて飲めないという患者さんも多く遭遇します。そのような方の治療の一端をこの薬が担えればと思います。
当院で治療できますので、ぜひご相談ください。
文責:総合内科専門医 宮内