腸チフスのワクチン(タイフィムブイアイ)とは何ですか?
今回、腸チフスの国産ワクチンが2025年6月に発売されたので、少し記載させていただきます。ぜひ、参考にして、ワクチン希望の方はご連絡ください。
腸チフスとは?
非常に強毒かつ侵襲性の腸内細菌であるチフス菌(Salmonella enterica serovar typhi)を原因とする急性全身性感染症です。主な症状は高熱・発疹・便秘です。稀に腸に穴が開いたりすることがあります。下痢はあまりみられません。
生活環境の改善や抗菌薬の開発などにより、先進国での発症率、死亡率は劇的に減少しています。しかし、今でもアフリカ、東南アジア、西太平洋地域の発展途上国では、公衆衛生上の深刻な問題となっています。
腸チフスの発生状況
日本で腸チフスの報告は毎年100人以下ですが、海外渡航者によって流行国から持ち込まれることが多いです。世界保健機関(WHO)や米国疾病対策センター(CDC)、英国健康保護庁、その他の保健当局では、南アジアや他の流行地域への渡航に際して、腸チフスワクチンの接種を推奨しています。
輸入ワクチンから国内産ワクチンへ
世界では以前から腸チフスワクチンが存在し、経口弱毒生ワクチンと莢膜多糖体の注射ワクチンが使用されていました。
しかし本邦では使用できるワクチンがなく輸入ワクチンに頼るのみで、万が一の副作用や後遺症についての国の救済措置・保証が適応されないために接種をためらう場合が多く、その結果腸チフスに感染する人がいました。
今回、国産初となる腸チフスワクチンが2025年6月30日にサノフィ株式会社から発売されました。
ワクチンはどんなワクチンなの?
タイフィムブイアイは、チフス菌(Ty2株)の精製Vi多糖体を1回接種量(0.5mL)として25μg含有する精製Vi多糖体腸チフスワクチン(Viワクチン)です。
本ワクチンは不活化ワクチンで、接種は1回筋肉注射でワクチン効果は1年目69%、2年目59%、3年累積55%で有効持続期間は2~3年とされています。パラチフスには無効です。
何歳から打てますか?接種間隔は?
輸入ワクチンは生後6ヶ月以上から接種が可能ですが、国産ワクチンは2歳以上からの接種になります。
接種回数は1回で大丈夫ですが、免疫持続が3年弱と比較的短いため再接種を希望する場合には3年ごとが推奨されています。
渡航の2週間前までに1回0.5mLを接種します。
値段はいくらですか?
当院では、国産のワクチンのみの取り扱いで、1,1000円(税込)/回になります。
ワクチンの副反応は?
他のワクチン接種と同様の副反応がみられますが、通常は一時的なもので数日で消失します。
最も多くみられるのは接種部位の痛み、筋肉痛、倦怠感、頭痛などです。 接種直後に注意が必要な副反応として、ショック、アナフィラキシー、血管迷走神経反射(気分が悪い、めまい、ふらつき)として失神があらわれる事があります。
どんな人が接種を考えればいいの?
・東南アジア、南アジア、アフリカ、中南米への渡航者 の方(特に、インド・パキスタン・バングラデシュのような高度流行地域においては、短期間渡航でも推奨します。 )
・現地で食事や水に触れる機会が多い方
・医療支援やボランティア活動で長期滞在される方
もし、ご希望の方は在庫を院内には置いていないので一度お電話で問い合わせ下さい。発注後数日で接種可能です。
文責:総合内科専門医 宮内