【糖尿病のステージと症状】初期〜末期まで段階別に解説
(この記事は、第二服部医院 院長、日本腎臓学会 腎臓専門医の宮内 隆政が監修しています。)「糖尿病と診断されたけれど、今自分がどのステージにいるのか分からない」「自覚症状がないから大丈夫だと思っている」――そんな声をよく耳にします。
実は、糖尿病は自覚症状がないまま静かに進行する病気です。「何も症状がないから大丈夫」と油断していると、気づいた時には取り返しのつかない合併症が進んでいることも少なくありません。
糖尿病のステージを正しく理解し、今の自分の状態を把握することは、将来の合併症を防ぐための第一歩です。この記事では、糖尿病のステージごとの症状と特徴を詳しく解説し、どのタイミングで医療機関を受診すべきかをお伝えします。
糖尿病のステージとは?分類の基本
糖尿病の進行度を示す指標
糖尿病のステージとは、病気の進行度を示す分類のことです。一般的には、血糖値やHbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)の数値、そして合併症の有無によってステージが決まります。
糖尿病は大きく分けると以下の5つのステージに分類されます:
- ステージ1(境界型・予備軍):血糖値が正常と糖尿病の境界線上
- ステージ2(初期糖尿病):糖尿病と診断されるが自覚症状はほぼない
- ステージ3(中期糖尿病):血糖コントロールが必要な段階
- ステージ4(進行期):合併症の初期兆候が現れる
- ステージ5(合併症期):重大な合併症が進行している状態
HbA1cと血糖値の関係
**HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)**は、過去1〜2ヶ月の平均血糖値を反映する重要な指標です。
- 正常値:5.5%以下
- 予備軍(境界型):5.6〜6.4%
- 糖尿病:6.5%以上
HbA1cが7.0%を超えると合併症のリスクが急激に高まり、8.0%を超えると深刻な状態と判断されます。
なぜステージ分類が重要なのか
糖尿病のステージを知ることで、今の自分にどんな治療が必要か、どのような合併症に注意すべきかが明確になります。
また、早期のステージであれば、生活習慣の改善だけで血糖値をコントロールできる可能性もあります。
逆に、ステージを把握せずに放置すると、失明、透析、足の切断といった重大な合併症につながるリスクが高まります。
【ステージ別】糖尿病の症状と特徴
ステージ1(境界型・予備軍)の症状
HbA1c:5.6〜6.4%
このステージでは、ほとんど自覚症状がありません。健康診断で「血糖値が高め」「予備軍です」と指摘される程度です。
主な特徴
- 空腹時血糖値が100〜125mg/dL
- 食後の血糖値が高くなりやすい
- 疲れやすさを感じることがある
- 体重がやや増加傾向
この段階でできること
食事療法と運動療法で、糖尿病への進行を防ぐことが可能です。炭水化物の摂取量を減らし、週3回以上の有酸素運動を取り入れることで、正常値に戻るケースも多くあります。
ステージ2(初期糖尿病)の症状
HbA1c:6.5〜7.0%
糖尿病と正式に診断されるステージですが、この段階でも自覚症状はほとんどありません。ただし、注意深く観察すると以下のような変化に気づくことがあります。
主な症状
- 喉が渇きやすい(特に夜間)
- 尿の回数が増える(頻尿)
- 疲れやすい、だるい
- 傷が治りにくい
- 視界がぼやけることがある
この段階での治療
生活習慣の改善に加えて、必要に応じて内服薬(メトホルミンなど)が処方されます。この段階で適切な治療を開始すれば、合併症を防ぐことができます。
ステージ3(中期糖尿病)の症状
HbA1c:7.0〜8.0%
血糖コントロールが不十分な状態が続き、体に明らかな変化が現れ始めます。
主な症状
- 強い喉の渇き(1日に何度も水を飲む)
- 頻尿(夜間に2〜3回以上トイレに起きる)
- 体重減少(食べているのに痩せる)
- 手足のしびれ、痛み(神経障害の初期兆候)
- 視力低下(網膜症の可能性)
- 足のむくみ(腎臓機能の低下)
この段階での治療
内服薬の増量や複数の薬剤の併用、場合によってはインスリン注射が必要になります。また、合併症の検査(眼底検査、尿検査、神経伝導検査など)を定期的に受けることが重要です。
ステージ4(進行期)の症状
HbA1c:8.0〜10.0%
合併症が明らかに進行し、日常生活に支障をきたす症状が現れます。
主な症状
- 激しい喉の渇きと多飲多尿
- 慢性的な疲労感、倦怠感
- 手足の強いしびれや痛み(糖尿病性神経障害)
- 足の感覚が鈍くなる(けがに気づきにくい)
- 視力の著しい低下(網膜症の進行)
- むくみが続く(腎機能の低下)
- 尿にたんぱくが出る(腎症の進行)
この段階での治療
インスリン療法が必須となります。また、眼科や腎臓内科との連携が必要になり、場合によっては入院治療が必要です。
ステージ5(合併症期)の症状
HbA1c:10.0%以上 / 重大な合併症あり
三大合併症(網膜症、腎症、神経障害)が深刻化し、失明、透析、足の切断などのリスクが非常に高い状態です。
主な症状
- 失明または著しい視力障害
- 腎不全による透析導入
- 足の壊疽(えそ)(足の切断が必要になることも)
- 心筋梗塞、脳梗塞のリスク増大
- 起立性低血圧(立ち上がるとめまい)
- 胃腸の不調(自律神経障害)
この段階での治療
透析治療、レーザー光凝固術(網膜症)、血管再建術など、専門的な治療が必要です。
見逃してはいけない糖尿病の初期症状
糖尿病は「サイレントキラー(静かな殺し屋)」とも呼ばれ、初期には自覚症状がほとんどありません。しかし、以下のような症状が一つでもあれば、早めの受診をおすすめします。
頻尿・喉の渇き
血糖値が高くなると、体は余分な糖を尿として排出しようとします。その結果、尿の量が増え、喉が渇くという悪循環が生まれます。特に夜間に何度もトイレに起きるようになったら要注意です。
疲れやすさ・体重減少
糖をエネルギーとして使えないため、慢性的な疲労感が続きます。また、体が筋肉や脂肪を分解してエネルギーを作ろうとするため、食べているのに体重が減るという現象が起こります。
視力の変化
血糖値が高い状態が続くと、目の水晶体がむくみ、視界がぼやけることがあります。また、網膜の血管がダメージを受けることで視力低下が進みます。
糖尿病の三大合併症とその症状
糖尿病が進行すると、以下の三大合併症が現れます。
糖尿病性網膜症
目の網膜の血管が傷つき、視力低下や失明につながります。日本の成人の失明原因の第2位です。
症状:視界のぼやけ、飛蚊症、視野欠損
糖尿病性腎症
腎臓の細い血管がダメージを受け、腎機能が低下します。進行すると透析が必要になります。
症状:むくみ、尿の泡立ち、疲れやすさ
糖尿病性神経障害
手足の神経がダメージを受け、しびれや痛みが現れます。感覚が鈍くなるため、けがに気づきにくくなります。
症状:手足のしびれ、痛み、感覚の鈍化、筋肉痛のような痛み
第二服部医院での糖尿病ステージ管理
当院では、糖尿病内科と腎臓内科のダブル専門を活かし、ステージに応じた適切な管理を行っています。
ステージ判定に必要な検査
- HbA1c測定
- 空腹時血糖値・食後血糖値
- 尿検査(尿たんぱく、尿アルブミン)
- eGFR(腎機能の指標)
院内迅速検査20分の強み
当院では、院内で迅速に検査結果を確認できます。採血から約20分で結果が出るため、その日のうちに治療方針を決定できます。
ステージ別の治療アプローチ
- ステージ1〜2:生活指導、必要に応じて内服薬
- ステージ3〜4:薬物療法の強化、合併症の定期検査
- ステージ5:連携病院への紹介、透析導入の相談
こんな症状があれば早めの受診を
以下のチェックリストに1つでも当てはまる方は、早めの受診をおすすめします。
✅ 喉が渇きやすく、水を頻繁に飲む
✅ 尿の回数が増えた(特に夜間)
✅ 疲れやすい、だるさが続く
✅ 食べているのに体重が減る
✅ 視界がぼやける
✅ 手足のしびれや痛みがある
✅ 傷が治りにくい
✅ 健康診断でHbA1c 6.5%以上を指摘された
まとめ
糖尿病は早期発見・早期治療が何より大切です。自覚症状がないからといって放置すると、気づいた時には重大な合併症が進行していることも少なくありません。
「自分は今どのステージにいるのか」を正しく知り、適切な治療を受けることで、健康な生活を長く続けることができます。
📍 第二服部医院 アクセス・診療情報
- 住所:東京都江東区東陽3-5-5
- アクセス:木場駅(東西線)徒歩3分
- 電話:03-6666-4756
- WEB予約:https://daini-hattoriiin.jp
糖尿病のステージや症状について不安がある方は、ぜひ一度ご相談ください。院内迅速検査で、その日のうちに適切なアドバイスをお伝えします。
記事執筆者
第二服部医院 院長 宮内 隆政
略歴
- 平成21年 東邦大学医学部医学科 卒業
- 平成21年〜 東邦大学医療センター佐倉病院
- 平成23年〜 東邦大学医療センター 腎臓内科(都立墨東病院救急・救命センター、国立病院機構東京病院 呼吸器科で研修)
- 平成24年〜 東京ベイ浦安市川医療センター 総合内科
- 平成26年〜 東京ベイ浦安市川医療センター 腎臓・糖尿病内分泌科
- 平成27年〜 聖路加国際病院 腎臓内科
- 平成30年〜 Cedars Sinai Medical Center
- 令和1年〜令和2年 ユアクリニック秋葉原
- 令和1年〜 聖マリアンナ医科大学病院 腎臓高血圧内科 登録医
所属学会
日本内科学会、日本プライマリケア学会、日本腎臓学会、日本透析医学会、日本臨床腎移植学会、日本高血圧学会、外来小児科学会、米国内科学会、米国腎臓学会、国際腎臓学会
資格
- 総合内科専門医
- 腎臓専門医
- 透析専門医
- 日本プライマリケア学会認定医
